乾緑郎 『機巧のイヴ 新世界覚醒篇』 (新潮文庫)

機巧のイヴ: 新世界覚醒篇 (新潮文庫)

機巧のイヴ: 新世界覚醒篇 (新潮文庫)

「君は武道か護身術でも嗜んでいるのか」

「ああ。馬離衝(バリツ)を少々」

「バリツ?」

1892年.万博の開催を翌年に控え,新世界大陸(ムンドゥス・ノーヴス)の都市ゴダムは空前の賑わいを見せていた.日下國のパビリオン,「十三層」の目玉は,かつてはひとのように動き話していたと言われる美しい機巧人形(オートマタ)伊武(イヴ).百年の間,動くことのなかった伊武が,ふとしたきっかけで覚醒しようとしていた.

万博目前の新大陸を舞台にした『機巧のイヴ』の続編.和風伝奇スチームパンクだった前作に引き続き,万博,鉄道王,直流対交流の電力戦争といったテーマを盛り込んだ新大陸伝奇スチームパンクとなっている.個人的にはバリツの解説にこれだけのページを使っている小説をはじめて読んだ(たぶん他にもいろいろあるんだろうが).変態揃いのうえ癖が強いのに,妙に隙が多い登場人物たちの存在は,物語の緊張感を削いでいた気がするのだけどどうなんだろう.短編から長編になったのが大きいのだろうけど,ネタの緻密さや密度では前作には届かないかなあ.悪い小説ではないのだけど,前作のインパクトが大きすぎたのだと思う.個人の感想です.



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