田中ロミオ 『人類は衰退しました2』 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫)

衰退した旧人類と妖精さんこと新人類の少し不思議なコミュニケーション.すこしフシギですね.すこしフシギですか? 既に多くのひとが挙げてるように「食卓にビールを」のような読み心地が気持ちいい.
妖精さんの不思議なスプーンで体が小さくなってしまったわたしの話,「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」.かつて『L.O.L.』*1を遊んだ私は自分のスケールの変化に伴いがらりと変わる世界に目が覚める思いをしたものです.こちらは変化の方向は逆なれど,やはりスケールの変化でがらりと変化を見せる世界の在りようが楽しい.小さくなったわたしの見る世界と,元に戻ったわたしの見る世界.描き方はメルヘンチックだけどうまく交わらない.サイズという新しい概念で区切られた,身近にあるセカイ系
不思議な時間ループに巻き込まれたわたしの話,妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」.ぐるぐる回る時間とわたしによってわたあめのように形成される不確実な存在,助手さん.妖精さんのいたずらだけならだけならほのぼのした話で終わるんだろうけど,そこに助手さんが絡んでくるおかげで話がきな臭くなっている.と思うのは私だけかね.おじいさんと助手さんの関係,ひいてはこの物語における人類の存在が一気に怪しいものになった気がしてなんとも気持ち悪い.でもそこが面白い.それにしても「優しい空間」といい犬といいバナナといい,話の片付け方がいちいちスマートで惚れるわぁ.この辺の小ネタは何かリスペクト元があったっけ? 忘れようとしても思い出せない.

*1:ドリームキャストはこのソフトのために存在したと私が信じる傑作