石崎とも 『せかいは今日も冬眠中!』 (電撃文庫)

せかいは今日も冬眠中! (電撃文庫)

せかいは今日も冬眠中! (電撃文庫)

暖房の効いた建物から一歩外に出ると、比較的暖かいはずの町の中であってもとても寒い。今は特に寒い季節だけれど、それにしてもこの寒さは異常だ。去年よりも確実に寒くなっている気がする。ラジオのニュースでは、寒冷化が続く世界の平均気温もここ数年は下がらず、なんとかマイナス五度付近で持ちこたえているって言ってたけど、そんなの信じられないくらい寒い。

百年以上続く寒冷化現象によって、氷雪に覆われる世界。人類の文明は衰退していた。世界に春を取り戻すため、研究者になりたいと夢見る少女、ササは、村中のひとがかき集めてくれたお金で学校兼研究施設「スプリングガーデン」に通うため、村を離れる。

平均気温氷点下5℃の世界に春をもたらすヒントを探すため、ササはチームの一員として研究に取り組む。その鍵を握るのは、シムと呼ばれる小さな生き物たち。「人類は衰退しました」+「フロストパンク」、それに「けものフレンズ」を少々、といった雰囲気の終末凍結世界SF。「研究者」をテーマにしているだけあって、フィールドワークやチームワークの重要性なんかをわかりやすく語っている。ちょっと「人類は衰退しました」に寄りすぎている気もするけど、あくまでやわらかく、自分の言葉で語っている感じがして好感が持てる。今のクソ暑い時期にちょうどいい、前向きで優しい物語だと思います。