フレドリック・ブラウン/中村保男訳 『宇宙をぼくの手の上に』 (創元推理文庫)

宇宙をぼくの手の上に (創元推理文庫 605-5)

宇宙をぼくの手の上に (創元推理文庫 605-5)

『天の光はすべて星』の復刊決定で SF 読みたちが盛り上がっているようなので,いい機会だからと積んでるのを取り出してきた次第.宇宙漂流の定番テーマを扱った「緑の地球」.皮肉たっぷりに世紀末の犯罪の姿を描いた「一九九九年」.ちょっといい話っぽい終わりで騙されそうになるけどこれひどいwww な「星ねずみ」など九編の短編を収録した短編集.「緑の地球」,「ノック」,「シリウス・ゼロは真面目にあらず」,「さあ、気ちがいに」は星新一訳の異色作家短篇集『さあ、気ちがいになりなさい』にも収録されているので読み比べてみるのもいいかも.私もだいぶ前に読んだはずだけどかなりの部分忘れてた.
そんななかでも,読んでいていちばん心躍ったのは「序文」だったりする.下手にあらすじを紹介するよりこの文を引用したほうがずっと素直に魅力を伝えられるはず.こんな洒落ていて,わくわくさせられてすいっと惹きつけられる序文は読んだことないよ.

読者よ、これらの短編さんにお会いください。月に思いをよせるハツカ鼠君に、救援にかけつけた怪物ベム諸君に、ゴキブリの思念投射に惚れこんだ男に、目だたない真紅の服を着た探偵氏に、ポルカ・ドットのネクタイを締めた駝鳥君に、サンドウィッチの中の宇宙船と、口のきけない雛さんがたに、そう、ぜひ会ってください。

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