- 作者: 打海文三
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/12
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 50回
- この商品を含むブログ (51件) を見る
混沌とした国内の情勢にスラム化した都市と荒廃した人心.北関東で生まれ育った私には馴染み深い地名が多く出てくるだけに身につまされる……ということは特にない.年齢にそぐわない言動の佐々木兄弟といい,下巻の主人公になる月田姉妹といい,語り手になる人物はどこかしら常人と遊離した位置にあるのが興味深い.おかげで,戦時下の荒廃を存分に描きながら,どこかぼんやりした膜が目の前に一枚張られているよう.読んでて不安な気持ちになる.はっきりした反戦の姿勢,あるいは賛美が見えるようなら落ち着いて読めると思うのだけど,それは許してもらえそうにない.作者の目的はリアリティやシミュレートを描くことにはなかったんだろうなあ.
面白かったです.下巻の感想は近いうちに.