ジョージ・オーウェル/高畠文夫訳 『動物農場』 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

動物農場 (角川文庫)

(前略)ただ、ベンジャミン爺さんだけは、自分の長い一生のこまごましたことまで全部おぼえているが、現に、事態が著しく良くなったり悪くなったりしたおぼえは一度もないし、また、著しく良くなったり悪くなったりするはずもないものなのだ、ときっぱりいった──空腹と、辛苦と、失望、これが、いつも変わらぬこの世の定めなのだ、と彼はいうのだった。

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荘園農場の動物たちは一致団結して自分たちを弾圧していた農場主たち人間を追い払い,人間に頼らない社会を組み上げようとする.豚,馬,犬,羊といった動物の姿を借りて,権力や大衆を痛烈に皮肉った寓話.『1984年』と並んで知られるオーウェルの代表作.うむむ,分かりやすい.時代や背景はあるにせよ,こんなストレートな風刺小説を書こうという神経がすごい.開高健言うところの「大胆さと面憎さ」,あと愚直さ? が痛いほど分かる.話としてはオーウェルの実体験をもとに書かれた私小説調の『象を射つ』『絞首刑』『貧しいものの最期』のほうが今となっては面白いのだけども,これら三編の短編と詳細(でいくらか客観性を欠いた)な訳者解説とあわせて読むことで,この話がいかにして書かれたか,どうやって『1984年』に至るのか,浮き彫りにされる背景がまた興味深い.