- 作者: マイケルシェイボン,Michael Chabon,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/04/25
- メディア: 文庫
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2008 年度のヒューゴー賞,ネビュラ賞,ローカス賞受賞の"トリプル・クラウン"を達成した,「歴史改変 SF +ハードボイルド・ミステリー+純文学」のスリップ・ストリーム・フィクション.悲願であるイスラエル建国に失敗したもののアラスカに希望と安住の地を構え,イディッシュ語を公用語とする架空の「ユダヤ人の国」とユダヤ社会の現在,過去に積み上げてきたもの,国際社会での位置,その他もろもろ.手に入れた国を再び手放すことになるユダヤ人の宿命を,ハードボイルドの姿を借りてヒリヒリした緊張感を保ったまま描ききっている.シミュレーション小説としてもハードボイルドとしても十二分すぎるほど面白く,なるほど三冠だと納得した次第.ユダヤに関する知識が『アドルフに告ぐ』で止まっている私には正直どこまでがフィクションなのか判然とせず,そのあたりを分かりやすく解説している訳者あとがきが非常にありがたかったです.私にもう少し知識があれば,「民族の悲願」の持つ意味をもう少し理解できていればたぶん思うところもまた違ってくるんだろうなあ.機会があればいつか再読したい一作でした.