川端裕人 『夏のロケット』 (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)

夏のロケット (文春文庫)

火星に憧れる高校生だったぼくは、現在は新聞社の科学部担当記者。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者を手伝ううち、高校時代の天文部ロケット班の仲間の影に気づく。非合法ロケットの打ち上げと事件は関係があるのか。

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川端裕人の小説家デビュー作をようやく読んだ.大人になって各分野に散り散りになっていたロケット班が各々の目的で再び集結,ロケットを飛ばすために尽力する.火星への航行計画を書いたノートをめくる場面など,覚えのあるひとならじーんとさせられる仕掛けも上手く織り込んでいる.変人揃いのロケット班に科学部長に公安と,登場人物たちはたぶん意図してデフォルメされているんだろうなあ.そのおかげか確かにかなり読みやすかったのだけど,反面で切迫感には欠ける気がしたのよなあ.あと,高校時代に持っていた純粋な憧れと,大人になってから手に入れた技術・地位と打算の折り合いがどこでどうついているのか,コミカルなキャラクターであるが故に私には見分けが出来なかった.そんなこともあえてぼやかしているのかなあ.いい話には違いないんだけどおかげでどこかすっきりしないうむむ.もっと「ハード」な小説だと思い込んでいたから,ってのもあるかもしれないけどうむむむ.