日日日 『ビスケット・フランケンシュタイン』 (メガミ文庫)

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

ビスケット・フランケンシュタイン (メガミ文庫)

すべての孤独な自我に、幸福がありますように。

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肉体の一部が腐敗・変質し,やがて死に至る不治の奇病.発症原因は不明,腐り始める身体部位は患者によってバラバラ,ただし発病者は少女に限られていた.「病」の研究施設で戯れに作られたのは,死者の変質した患部を切り取って繋ぎ合わせた,継ぎ接ぎだらけで左右の眼の大きさも違う異形の「お人形」.
男と女,母と娘,閉じた個.病に冒されたひととひととの関わりのさまざまな形に,「病」から生まれた怪物(非人間)であるフランケンシュタインの少女を関わらせることで,意識と自我の在処を問う.訴えたいことは「ギロチンマシン中村奈々子」シリーズとおそらくほぼ変わっていないと思うのだけど,「七割くらい完成した原稿を放りだし、「何かちがうんです」と最初から書き直し」*1たというだけあって,気合の入り方がまるで違う.生命だの自我だのといったものへの描き方から考えがかなり整理された印象を強く受けた.グロテスクな描写の数々も静かで洗練されており,悪趣味より必然を感じる真摯なもの.久しぶりに心から良かったと思った日日日作品なのでした.

*1:【謝辞】より