坪田譲治 『坪田譲治童話集』 (新潮文庫)

坪田譲治童話集―新編 (新潮文庫)

坪田譲治童話集―新編 (新潮文庫)

これはボクの夢だ。ホントウはヒルに見た夢なんだ。

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日本児童文学の三大作家の一人に挙げられる*1坪田譲治の代表的な作品 17 編を収めた童話集.それぞれの短い話は登場人物や時系列でなんとなく(ほんとうになんとなく,というレベル)で繋がっていて,形式は連作短編に近い.どの話も現実と死後の世界と夢と白昼夢が厳密な区別なく交差する独特の視点から描かれている.子どもが見ている世界やら社会やらの視点そのもの,とは言わないまでもそれに近いもの,なのかもしれない.本来的な意味でのシュールレアリスムに近い,幻想的とも悪夢的とも呼べそうな話の数々は,私のイメージしていた童話とはほど遠いものだった.いやだって童話には寓意や説教がつきものだと思っていたからさ.貧しい童話観.あと波多野完治先生のやたら物々しく鼻息荒い解説がなんつうか味わい深かった.良かったです.

*1:ぐぐって知りました