神林長平 『アンブロークン アロー 戦闘妖精・雪風』 (早川書房)

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風

<私ことアンセル・ロンバートはジャムと結託して FAF をわがものにすることをここに宣言する。私の支配する FAF は、地球人を守る義務は負わない。地球人はわが FAF にとって敵である。私は、ジャムになる>

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フェアリイ星より地球のジャーナリスト,リン・ジャクスンに届いた手紙は,フェアリイ空軍 FAFロンバート大佐の手によるジャムから人類への宣戦布告だった.FAF と未知の異星体ジャムの,互いの存在を賭けた戦いは続く.
10 年ぶりのシリーズ第三部.世界とはどのようなものか,異なった自己を持つ三者(人間/雪風/ジャム)を通して表す.描かれるのは「哲学的な概念」(言葉,意識,認識,「神」,人間 etc...)をミサイルのように撃ち合い,己のもとに世界を引き寄せ確固とするための観念的な戦い.不完全にしか認識できない相手を探り理解しようとするコミュニケーションを「神」を使って説明するなど,サイエンスよりもスペキュレイティブにかなり寄ったフィクションになっている.マガジンでは未読で本当に 10 年ぶりに読んだ私ははて雪風ってこんな極端な話だったっけと正直首をかしげたのだけど,静かに語られるテキストに興奮したのもまた事実.面白かった.

おれは人間だ。これが、人間だ。わかったか、ジャム。

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