御影瑛路 『空ろの箱と零のマリア2』 (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫)

「人を苦しめるって、苦しいね」

空ろの箱と零のマリア〈2〉 (電撃文庫) - はてなキーワード

最初に気づいたきっかけは送った覚えのない愛の告白のメールだった.日に日に増える記憶の断絶.その間の覚えのない理不尽な行動.携帯電話に残されていたボイスメッセージによると,【石原雄平】を名乗る何者かが星野一輝の肉体を乗っ取ろうとしているらしいのだが.断絶する時間は日を追うごとに増えていく.
学校を舞台に,特殊な力を持つ“箱”にまつわるミステリアスな物語.ある周期で入れ替わる【もう一人の僕】の正体とは,そして【もう一人の僕】と【僕】のひとつの体をめぐる戦いの行方は.超常能力をきっかけにした精神と精神の戦いではあるものの,派手なバトルではなく静かな駆け引きで話は動いていく.意外なほどあっけなく崩れる日常生活のもろさ,各人の抱えるえぐい事情など,あくまで日常や現実に基づいたうえで,自己と他者について語るストーリーはなんだかんだありながら雰囲気もあって上手いと思う.……のだけど,エピローグがあまりにあっさりしていたのは拍子抜けした.丁寧に組み立ててきた話もこれじゃ台無しじゃね? という.3 巻へのヒキは強烈で続きは確かに気になるんだけど,釈然としない気持ちは残った.