- 作者: 円城塔
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/01/07
- メディア: 単行本
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確かに、物理現象としての後藤さんは未だに存在を続けていた。たとえば、五十六億七千万光年の彼方から届く後藤さんの声。ある時を境に、後藤さんが全宇宙から消えてしまったのだとしても、消失の時点から五十六億七千万年の間にわたり、空から届く後藤さんの声は肉声と呼ばれ続ける資格を持っているはずである。
後藤さんのこと (想像力の文学) - はてなキーワード
「御世話になっております。後藤です」
帯曰く「難しくてためにならない、でもなぜか心地いい言語遊戯」.2007 年から 2009 年にかけて発表された短編 6 篇+1(書き下ろし?) の作品集.掴み所があるような全くないような,よく分からないけどなんか面白い,といういつまで経っても相変わらずの感想で申し訳ない,情けない.
『後藤さんのこと』は宇宙に遍在する後藤さんにまつわるエトセトラをまとめた四色カラー短編.後藤さんがゲシュタルト崩壊した.円城塔が血の流れる小説を書くのは珍しい気がするのだけどどうでしたっけ.
『さかしま』は宇宙へ旅立つ帰還者 or 生還者に向けて書かれたマニュアルかしら.読者を小馬鹿にしたようなマニュアル文ってつい最近どっかで読んだ気がする.あれは竜騎士07 だったかしら.
『考速』.二次元状の展開と意味的な展開とを組み合わせた,日本語を使った言葉遊び? 帯のコピーをまさに体現した短篇.
円城版銀河帝国の興亡『The History of the Decline and Fall of the Galactic Empire』.銀河帝国がゲシュタルト崩壊した.面白いっちゃ面白いが,円城塔がこれを書いたという事実が面白いんじゃなかろうかという気がする.
『ガベージコレクション』.過程で捨てられたゴミデータをもって成される可逆な計算の試み,のような.はじまりと終わりのない遺書.
スコップで溝を掘り続ける男『墓標天球』.立方体の上をなぞる少年と少女はなぜ噛み合わずすれ違い続けるか.
目次のための目次のみで構成された『INDEX』.短いセンテンスの羅列で書かれた本と魔法使いと少年の物語.これは素直に想像力をくすぐられる感覚があった.