月村了衛 『機龍警察』 (ハヤカワ文庫JA)

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

誰かに殴られた。誰かを殺した。誰かを愛した。
そんな話は聞き飽きた。

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大量破壊兵器の衰退に伴って発展した二足歩行有人兵装「機甲兵装」.警察法の改正に伴い設立された特殊セクション,警視庁特捜部 SIPD──Special Investigators, Police Dragoon──は,機甲兵装を使ったテロリストや犯罪者たちに対抗するため,未分類強化兵装「龍機兵」とそれを操る三人の傭兵を雇い入れていた.
天地無用!」や「NOIR」などアニメの脚本を手がけてきた作者の小説デビュー作.警察組織の頑なな体質と変化する時代の軋轢を強烈に織り込んだ,"至近未来" のハードボイルド.ひとことで言うと現代風「パトレイバー」かな.「狛江事件」や東ティモール紛争を挟んで,犯罪や戦争が変化しているにも関わらず,傭兵や特捜部という「部外者」を,場合によっては犯罪者以上に敵視する旧弊な組織体質を皮肉っぽく描いている.犯罪や新参者を敵視する理由・事情は,個人個人を描くときには明白に説明されるのに,「組織」になった途端にもやってしまう.このあたりの気持ちの悪さがしっかりと出ていると思う.未分類強化兵装「龍機兵」というカッチョいい兵器がどういう代物であるのかが明かされないので,終盤の事件の解決や近接戦闘の強さに釈然としないところはちょっとあったけど,傭兵たちの戦いっぷりやワケありの過去,それぞれに頑張る特捜部の面々は素直にカッコよく楽しかったです.