深見真 『ブロークン・フィスト2 傷だらけの遠い明日』 (富士見ミステリー文庫)

「そうなんですよね……」闘二は眉間に細い皺を寄せた。「そこが、難しいんですよ。犯人が僕たちに何を見せたいのか、どういう方向に誘導したいのか……。こんなに情報がそろっていて、凶器だけ判らないのがもどかしい」そして、溜め息をついた。「ここまで完璧な『凶器消失』は、ミステリー小説の世界でも珍しいかもしれませんよ」

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古流剣術,新伝天武会.その第一回演武会の最中,会長の工藤が斬殺死体となって発見された.男子トイレで見つかった死体は,鋭利な日本刀で首を切断され,さらにその頭部は火をつけられていた.
凶器の日本刀はどこへ消えた? 「古流剣術演武大会殺人事件」に挑む「格闘探偵」武田闘二の活躍.第一回富士見ヤングミステリー大賞受賞のシリーズ第二弾.なにかと引き合いに出される「古流兵術式密室殺人事件」(一巻)と比べるとおとなしく見えるけど,こちらもトリックのとんでもなさでは引けを取らないな! 裏の武術流派が暗躍する裏社会の荒唐無稽なカッチョよさも素敵.武術やトリックがどこまで妥当なのかは判断できないけど,迫力はビシビシと伝わる.なにより,筋肉やら映画ネタやら,いちいち楽しそうに書いているのがすげー良かったです.