神林長平 『敵は海賊・猫たちの饗宴』 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

敵は海賊・猫たちの饗宴 (ハヤカワ文庫JA)

〈わたしも休みがほしいです〉
「休んでどうするんだよ。土星で温泉浴でもするのかい?」
〈全兵装を使って黒猫退治をします〉

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対宇宙海賊課の刑事コンビ,アプロとラテルはチーフから突然クビを言い渡される.ふたり(ひとりと一匹)が暴れると市民から苦情が出るしコストはやたらかかるし,それ自体は妥当な決定ではある.チーフが最後にくれた,再就職の推薦状の先は,タイタンの 3D 映画会社だった.……なんで?
敵は海賊」シリーズ第二巻.映画会社に設置されていたコンピュータ支援思考システム,略して CATS をめぐってのひと騒動.情報軍と海賊課が模擬戦と称してなぜか野球で対決したりする影で伝説の宇宙海賊匋冥・ツザッキイは暗躍し,やがてすべてが猫になる.一巻に比べるとスケールが落ちる感はあるけど,面白かった.ユーモラスな海賊課の面々と野望を抱く宇宙海賊の温度差はもちろん,表面的なやりとり・出来事の外側にさらに大きななにかがあることをほのめかす見せ方も然り.単に愉快なだけでなく,不思議な読後感が残った.……おそらくは作者の思う壺だろうけども!