餅月望 『ロイヤル☆リトルスター 〜魔法王女はアイドルを目指す〜』 (スーパーダッシュ文庫)

なるほど、まぁ、よくよく考えれば超光速宇宙船の技術とか、ムーンステーションの重力制御にしたって僕にはさらさら原理がわからないのだから魔法とそう変わらないのかもしれない。

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ファーストコンタクトから 5 年.地球は十数の惑星国家と交流を持つようになっていた,そんな時代.ある雨の日の放課後,アイドル研究会に所属する瀬名信一は,濡れそぼちながらひとりぽつんと歌う少女に出会う.話を聞くと,彼女は破産寸前のある星の王女様で,月軌道上のムーンステーションで開催される「アイドルスターダスト」で優勝し,借金を返すためこの地球にやってきたという.
ひとりぼっちの王女セノンをプロデュースしてトップアイドルへ導くのだ.「小学星のプリンセス☆」で異星間のロミオとジュリエットを描いた作者の新作.ファーストコンタクト後の現代日本,てことでちゃんと確認したわけじゃないけど世界観は「小学星〜」と繋がっているのかな.
設定だけ抜き出すとキワモノ極まりないのだけど,それぞれのパーツにきちんとした説得力を持たせながら話を動かしているのが素晴らしい.異星人の科学技術(上記の引用部分)や,なぜいくつもの星の異星人でオーディションが成立するのか,といったあたりの理屈づけも分かってやっているっぽい.またアイドルのプロデュースとはどういうものか,「人」とバーチャルアイドルの制約など含め,バランスの取れた適度な説明量で,リーダビリティは非常に高い.簡潔ながら十分な説得力を与えている.アイドル王女セノン(11 歳)の躍動する描写も,「小学星〜」同様にビョーキがかっていてこれまた素晴らしいとしか.それだけにクライマックスはちょっと気になったりもしたけれど,魔法なら仕方ないね.傑作だと思いました.