立川浦々 『公務員、中田忍の悪徳2』 (ガガガ文庫)

「ああ。そうした線から考えていくと、ヒトという存在の定義は極めて曖昧になる。私見を述べさせて貰えば、今までは地球上にヒト以外のヒトに近い何かがいなかったため、わざわざ厳密な定義を作る必要がなかったんじゃないか」

中田忍はひとつの悪徳を犯していた。福祉生活課支援第一係長という社会的地位にありながら、自宅に現れた異世界エルフを保護し、秘密裏に生かし続けること。福祉課の厳しい業務に加えて、異世界エルフことアリエルに関する悩みと罪悪感、自責の念が、忍を日々苛んでいた。

異世界エルフとのファーストコンタクトのそれからを描いた第二巻。異世界エルフとの最初の交流はどうやら平和裏になんとかなった。では、異世界からたったひとりで現れたヒト型生物を、この現代社会で生かすにはどうすべきか? 主人公・中田忍の人物にスポットを当てながら、福祉に関わる大人という立ち位置から解釈し、社会と法の中で生きる方法を探ってゆく。一巻がファーストコンタクトSFなら、二巻はポストファーストコンタクトの社会科学SFと言えるかな。上記の引用部分みたいな考え方が話の流れの中でさらっと出てくるのはいいな、と思う。それぞれに専門を持ち、未熟なところもある大人たちが考えて試行錯誤して行動する。出オチに終わるんじゃないかと思っていたけど、ものすごく丁寧で考え抜いているのがわかり、懸念は完全に吹っ飛んだ。続きが楽しみなシリーズがまた増えました。



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