大泉貴 『ランジーン×コード』 (このライトノベルがすごい!文庫)

ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫)

ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫)

「もしも、本当に価値を感じていないんだったら、自分が喰った奴の数なんかいちいち覚えてないと思うけど?」

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遺言詞.その「言葉」は,まるでウィルスそのもののように変異を繰り返しながら蔓延し,脳神経そのものを根本から作り替える.遺言詞によってまったく異なった世界を見るようになった子どもたちは,同じ「言葉」を共有するもの同士でコミュニティを作り生活するようになっていた.彼らはコトバによって生まれしケモノ,コトモノと呼ばれていた.
第一回「このライトノベルがすごい!」大賞・大賞受賞作.「言葉」,「物語」,「文字」.導入部でてっきりミュータントものかと思いきや,スタンドもののようでもあり.流行り(?)の言語 SF をライトノベルレーベルでやるとこうなる,的な物語.ロゴと成美の関係,様々なコトモノの生態など,情報がかなりごちゃっと提示されるため正直分かりにくい部分も多々.「言葉」がテーマなのにそのつなぎはないだろと思う部分が一ヶ所あったりと,粗も多いのだけど,全体を通して意欲はすごく感じられる.章タイトルがテッド・チャンだったり,“イーガン・モデルによる量子脳の選択的波動関数収束説”なんてのが出てきたりと,ある程度分かってやってるんだろうなあ.SF のひとも気が向いたら読んでみてもいいかもよ.良かったと思います.
『このライトノベルがすごい!』大賞 受賞作特集