日日日 『みにくいあひるの恋3』 （MF文庫J）

みにくいあひるの恋 3 (MF文庫J)

父と母が死んだ日から独り占めだった『兄』を、横からかすめとったやつがいた。
泥棒だった。
犯罪者で、罪人だった。
でも、いちばん許せないのは。

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夏休みの期間，学校に泊まりこんで共同生活を行う，通称夏学も後半に差し掛かった．映研では高校に伝わるある実話をモチーフにした映画を撮ることになった．
恋をすると死んでしまう病気が存在する世界の恋物語第三巻．良かったあ．「恋をすると死ぬ」という乙女チックな前提条件と，そこから派生する「兄妹」というオタクの妄想チックな風習を消化して，面倒くさい悲恋ものへと昇華していた．特に夏休みの後半の学校で群像劇風に展開される前半は見事．甘酸っぱくも，悲劇の予感をガリガリ掻き立てられる．ライトノベル的な仕掛けは中盤やラストで唐突に差し挟まれる感があり，今回は興ざめの材料になっていたように思う．こういうのを読むと，日日日さんひょっとして別のフィールドのほうが向いている作家なのかなあと思わないでもない．ともあれ今回は掛け値なしに素晴らしかったです．