山本弘 『アリスへの決別』 (ハヤカワ文庫JA)

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)

ごめんよ、アリス。僕は君を守れない。

Amazon CAPTCHA

グラスハウスのスタジオで,ルイス・キャロルがアリスに語って聞かせた,150 年後の世界のお話.「アリスへの決別」非実在青少年問題の行き着いた極北の未来像.問題提起というにも陳腐な気もするけどこれはこれで.
大衆はいかにしてディストピアを築き上げたか,「リトルガールふたたび」.匿名の圧力が世論を動かすことの恐ろしさを分かりやすく.それはそうと,響閣下の治世ならわりと平和そうだしひっくり返すの難しくなさそうだしいいのではないか.
マスコミからもてはやされる自称霊能者が見た「地獄」の姿.「地獄はここに」は社会派ホラーと言うのかな.詐欺師のテクニックを分かりやすい形で見せてくれるのは興味深い.
「オルダーセンの世界」「夢幻潜航艇」は,真でも偽でもない,「夢」という状態を描いたふたつでセットの短篇.舞台装置や固有名詞に妙な懐かしさがあって楽しいなあ.
ほか,密航者ミンレンと移民船のクルーの「私」の間にある価値観の溝を描く「地球から来た男」と,「NOVA1」から再録の月面 SF ミステリ「七歩跳んだ男」を収録した短篇集.楽しゅうございました.それはそうと,カバーイラストがえらいことになっていてわろた.↑ のサイズの書影だとよく分からないと思うので,とりあえず書店に行って帯を外してみるといい.そのままレジに持って行くといい.