- 作者:岩城 裕明
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2020/02/21
- メディア: Kindle版
「いやいや、それはない」おれはリビングの隅に設置されたカメラを見る。「映像に残ってるから。優馬だって確認したろ?」
優馬は瞬きをする。「え、映像に残ってると夢じゃないんですか?」
「映像に残ってるなら、それはもう現実だろ」
リサーチ業を営む穂柄は,不動産企業に勤める友人から,とある心理的瑕疵物件の調査を依頼される.909号室で7年前に妊婦が自殺したそのマンションは,その後同じ階の住人たちが退去し始め,現在ではその階だけが無人となっているのだという.穂柄は助手の大学生を伴い,定点カメラを設置しての一週間の泊まり込み調査を行う.
妊婦が割腹自殺した部屋を観察する一週間.次々に起こる不気味な現象と,だんだんと明らかになる事態,そして後味の悪さを煮詰めたようなラストへ…….読みやすく親しみやすい語りと,本自体の薄さ(約170ページ)に乗せられて,するすると地獄へ導かれていく.地獄への道は読みやすさで舗装されている,みたいな.デビュー作から読んでいるけれど,リーダビリティはいちばん高いのではないかしら.楽しゅうございました.