牧野修/原作=石井克人 『REDLINE』 (ハヤカワ文庫JA)

REDLINE (ハヤカワ文庫JA)

REDLINE (ハヤカワ文庫JA)

──馬鹿だよね。こんな時にまだレースを続けてるって。だけど、この世が終わる寸前までレースを続ける馬鹿ってのはいるんだよ。それがレッドレーサーなんだよな。

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反重力エンジンを搭載したエアカーが主流となった時代.既に時代遅れとなったタイヤつき自動車を駆り,全宇宙最速を決めるレース〈REDLINE〉が今回も開催される.
映画『REDLINE』のノベライズ.レース展開やその前後の出来事も含め,ストーリーはほぼ忠実に映画をなぞっているかな.特に序盤は作者の遊びも少なく,かなり固い印象がある.……のだけど,本領は参加レーサーたちそれぞれの事情を語りつつ,レースがヒートアップしていく中盤以降.宇宙の最期を前にしても,走ることしか考えないレース馬鹿たちはどいつもこいつも素敵にカッコ良い.原作のカッコ良さを十二分に引き出すと同時に,原作をうまく補完していた.ロボワールド(レースの舞台)の成り立ちや,主人公 JP が「すごく優しい男」と呼ばれるようになった所以も明かされるのが個人的にすごく良かったと思う.映画ではよく分からなかったあのシーンにはこういう意味があったのか,という感じで.以上,どうしても映画と比較しての感想になってしまっているのが恐縮ですが,映画未見でも気にせず楽しめるのではないでしょうか.