リチャード・マシスン/尾之上浩司訳 『アースバウンド ─地縛霊─』 (ハヤカワ文庫)

アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

アースバウンド ―地縛霊― (ハヤカワ文庫NV)

「哀れでドジな夫というものは、いつも最後になって現実に気づくというのがドラマのパターンだけれど」と言う。「でも、その──」咳払いをする。「──ぼくは、それを他人事とすますことができるのだろうか?」

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デイヴィッドとエレンの夫婦は,ハネムーンを過ごしたローガンビーチを 20 年ぶりに訪れる.冷え切った夫婦仲を修復する手がかりを探すために…….滞在先に選んだボロ別荘で,デイヴィッドがマリアンナと名乗る謎の美女と出会うことから,夫婦はおかしなことに巻き込まれていく.
タイトルでネタバレした感のある「本格ゴースト・ホラー」.しかしホラー要素はかなり少なく,中年夫婦が歩みよったり離れたりセックスしたり破局しかかったりを,かなりくどくどしく描く話という印象が強い.夫婦仲が冷え切った理由は夫の浮気にあるらしいのだけど,当のデイヴィッドにいまいち反省の色が見えない.嫁が寝ている同じ別荘で別の女とセックスしたり,理由はあるのだけど説得力はあんまない.なによりも同じようなことをくどくど繰り返すのが読んでてきつかった.1982 年の作品であることを思えば相応に古くなっているだけ,と言えなくもないのだけど,そこを差し引いても,実におっさん臭い小説であることだなあと思った.