- 作者: 秋口ぎぐる,睦月ムンク
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/06/18
- メディア: 単行本
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「あんた変わってるわ」
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「そうですか」
「なんで助けたの? 私のこと。ありがたいけど」
「理由は、自分でもよくわかりません。直感でしょうか。悪い人ではない犯罪者は、助けたほうがいいような気がしました」
15 年前の〈大感染〉以降,K 市は,フェンスの中の隔離都市だった.感染と発作への耐性から市民は 4 つのランクに分けられ,それぞれ別の地区で暮らしている.B ランク地区に母親と住む少女萌絵は,怪我をした女性マリーを助けたことから,反政府組織へ所属することになる.萌絵は,C ランク地区に暮らす父親の行方を探していた.
貴重な資源となった紙の新聞を武器にした反政府活動.その過程で少女が得たもの,知ったこと.真っ当な成長物語,なのだと思う.社会の暗部,〈大感染〉の真相,反政府活動がもたらした結果など,大きな世界観の変化に触れつつも,物語は少女を中心として離れない.熱狂を見る少女はあくまで物静か.この温度差が,なんとも言い難い不思議な読み心地を生んでいたのかも.率直に言ってかなり地味な小説だと思う.……のだけど,社会を描いた話と見るか,少女を描いた話と見るかで読むひとによって評価が変わる.かもしれない.