さがら総 『変態王子と笑わない猫。2』 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。2 (MF文庫J)

変態王子と笑わない猫。2 (MF文庫J)

だけどそれは、百パーセント同じ座標で同じ目線で同じ風景を見て暮らすという意味じゃない。そんなのは不可能だ。ぼくらは同じ世界のすぐそばで、決して重なり合わずに、たまに寄り添うようにして生きているのだ。
ぼくの言葉が通じるのかどうか、ぼくにはわからない。でも、言葉でいわなきゃなにも始まらないのだと最初に教えてくれたのは、当の筒隠自身だった。

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夏休みももうすぐ終わりの 8 月 30 日 18 時.横寺がとぼとぼと帰宅すると,そこにあったはずの自宅がきれいさっぱり消えていた.パニック状態の横寺はつくしと月子の筒隠家に転がり込むことに成功するが,そこにあったのは巨大な「笑わない猫」の像だった.
MF文庫Jライトノベル新人賞最優秀賞受賞作の二巻.皆が言うほどにはキャラクターに愛着を持てなかったのだけど,何重にもすれ違い重なりあいする面倒くさい関係にぐいぐいと引き込まれた.上辺にギャグをまぶしながら細やかで軽快,それでいて力あるテキストは非常に魅力的.「笑わない猫」の不気味な謂われも,物語に良いアクセントをそえていた.しかし主人公の横寺がどこまで本心を語っているのかよく分からないのがなんとなく不安になる.いわゆる「信頼できない語り手」ってやつではないかという気がした.まあ考えすぎかもですが.ともあれ,良いものでした.