赤月カケヤ 『キミとは致命的なズレがある』 (ガガガ文庫)

キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)

キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫)

『無茶な質問ですね。ですが、それならば私の返答は前と変わりません。多くの人間は、今の海里克也がこの世からいなくなることを望んでいます。無論、私もです。あなたも最初はそうだったはずです』

キミとは致命的なズレがある (ガガガ文庫) | 赤月 カケヤ, 晩杯あきら |本 | 通販 | Amazon

海里克也は保健室で目が覚めた.保険医の話によると階段で転んで気を失っていたらしいが,克也にはその記憶がない.なんとはなしの違和感を抱えたままの克也はその次の日,下駄箱で自分宛ての手紙を見つける.「──この手紙の差出人を見つけてください。さもなくばあなたは不幸になります」.
記憶喪失と,殺人の幻覚に悩まされる主人公.僕は多重人格の殺人鬼なのだろうか,それとも? 第 5 回小学館ライトノベル大賞・優秀賞受賞のサスペンス.克也はじわじわとした違和感と疑心暗鬼に追い詰められていく.周りには見えないものが自分にだけ見えるという,ライトノベルによくあるお約束を,うまく逆手にとってミスリードを誘っている.心理状態をそのまま外見に反映させる描写にも説得力があるし,会話文中の同音異字のアクセントの違いで表現するなど,端々にもしっかり特徴があって面白い.完成度は高いと思う.楽しゅうございました.次回作が出たら買うよ.