赤月黎 『魔人伝奇OROCHI』 (スニーカー文庫)

魔人伝奇OROCHI (角川スニーカー文庫)

魔人伝奇OROCHI (角川スニーカー文庫)

「お主、《倒凶》も知らんのか?」
「え? いや、東京だろ、ここは? それくらい知って」
『よく聞け大蛇。ここは《倒凶》と呼ばれる、生者の住む《現世》と死者の住む《隠世》の間にある世界じゃ』

魔人伝奇OROCHI (角川スニーカー文庫) | 赤月 黎, 山×2 |本 | 通販 | Amazon

生まれ育った山里から,喋る刀・叢雲を携えてひとり上京した少年・大蛇.東京駅で出会った少女・白夜に連れられて東京の裏面世界,《倒凶》を訪れた大蛇は,そこで二頭の狼に襲われる.
構想約 10 年.「繰り世界のエトランジェ」に続く作者の新シリーズ.すげーカッコ良くてすげー楽しい.これぞ現代伝奇.何体も登場する異形のキャラクターたちが,それぞれきちんとフリークな造形をしていて,最低限ながらしっかり外見描写されるのがすげー良い.仮りそめの不老不死をもたらす人工人魚,それを自ら作っては肉を喰らい生き続ける男.女の子の姿をした式神も,「異形」の外見を持っていることを逃さず描いているのはポイント高い.なにより,クライマックスで描かれる「神」の描写にはシビれた.
ごちゃっとした当て字のセンスも,まあ中二といえばそうなんだけど,ワンアンドオンリーの真似できないセンスだと思うのですよ.「〜エトランジェ」同様,テキストはかなり説明的なのだけど,不思議と読みにくさを感じない.既に二巻が出ているタイミングで言うことでもないけど,これは期待できる.続きも楽しみに読ませてもらいます.