明月千里 『月見月理解の探偵殺人5』 (GA文庫)

月見月理解の探偵殺人 5 (GA文庫)

月見月理解の探偵殺人 5 (GA文庫)

「だから、もし君に私への情が一欠片でも残っているのなら。私のことを少しでも哀れだと思うなら、ここで、終わりにして欲しい」
理解が僕を見上げたまま、そう告げる。理解の赤い大きな瞳が、困惑する僕の顔を映し出していた。


私を殺して欲しい。


心を読む能力なんてなくても、今は理解が、そう言っているように聞こえた。

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豪華客船で行われる,『探偵殺人ゲーム』決勝.ここでの敗者は実際に命を奪われる.月見月理解と果無連理の最後の対決が始まる.
『探偵殺人ゲーム』シリーズ完結編.相手の思考を読む能力《無限に扉のある高座》(フリズスキャルヴ)を奪われた「月見月理解」の最期.ゲームの基本は会話と駆け引きが鍵を握る「人狼」もどき.積極的に盛り上げないと面白くならないゲームシステムを,ここまで積み上げてきた物語とハッタリの効いた語りでもっておおいに盛り上げている.豪華客船という限定された舞台や,ゲーム外の出来事を利用した物語運びも効果的.起こっていることは地味だと思うのだけど,かなり読ませられる.完結編にして,ゲーム小説として完成したのではないかな,と.良いシリーズでした.