てにをは 『また殺されてしまったのですね、探偵様』 (MF文庫J)

リリアナは俺が殺されるたびにいつもそばにいて蘇りを待ってくれている。俺の血や、涙や、嘔吐物をなんのためらいもなく受け止めて。

そして生き返った俺に、呆れと嘲りと生真面目さと愛情の混在した声色で言う。

「また殺されてしまったのですね、朔也様」

「……そうみたい」

追月朔也は伝説の名探偵の一人息子。半人前の高校生探偵として、助手のリリテアとともに父の事務所で浮気調査や猫探しといった地味な仕事をこなしていた。ある日、浮気調査のため、乗り込んだ豪華客船で何者かに殺されてしまう。

「本当に、探偵は命がいくつあっても足りない職業だ」。豪華客船、劇場、館と、行く先々で殺人事件に巻き込まれては殺され、生き返り、解決する。なるほど、これが特殊設定ミステリ、なのかな? 探偵が何度も殺されては生き返ることを除けば、ミステリとしてはおそろしく古めかしいのは意図的なものなのかな。ほぼハッタリだけで作られた、土曜21時の日テレのドラマを思い出させるエンターテインメントでした。