日日日 『平安残酷物語』 (講談社BOX)

平安残酷物語 (講談社BOX)

平安残酷物語 (講談社BOX)

わたしは携帯電話を振りあげて。
「誰に言っても、信じてもらえないのですけどね?」
思いっきり壁に投げつけて、粉砕して、役立たずになるまで破壊しました。
「そりゃ、無駄な人生でしょう。好きなことだけして、だらだら怠けて。でも、だったら有意義な人生とは? 意味のある生涯とは? くだらない! 何ですかそんなもの!」
声は聞こえなくなります。きゅう、と鳴いてわたしを眺める愛しい毛虫を、そっと抱きしめて──素直な気持ちを吐きだしました。
「わたしは、そこそこ、幸せなのですよ?」

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時代は昭和から平成へ,平成から平安へと移り変わる.大人や男の子たちはみな死ぬか猿になり,世界は虫たちのものとなった.そして引きこもりは貴族の特権になっていた.
全 36 話の断片で描かれる,貴族の少女こづえと小春の「残酷」な日常の日々.ポストヒューマンもの,といってもまあ間違いではないはず.残酷さとだらっとした空気が同居している感じは「人類は衰退しました」にも似ている.死んだり殺したり喰ったり喰われたりを,同じ時間をつづら折りにしながらなんども繰り返している感じ.まんたんブロードでの連載プラス書き下ろしとのことなので,オチが投げっぱなしになっている話はおそらく連載分なんだろうな.世界はほとんど滅んじゃっているのだけど,そこそこ楽しくやっているし無理して救ってもらわなくてもいいんじゃね? という子どもの論理と,それでもなんとか自分の責任を果たさなくてはという大人の義務感がすれ違ったり寄り添ったりという微妙な感覚を,はっきりと言葉で明示しているのがすごく良いなあと思うのですよ.