ジョン・ハート/東野さやか訳 『アイアン・ハウス』 (ハヤカワ・ミステリ)

アイアン・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

アイアン・ハウス (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

マイケルははじかれたように立ちあがった。ここはただの場所なんかじゃない。彼ら兄弟を吐き出した世界の、非常でごつごつした口だ。ジュリアンは壊され、マイケルは……
なにになった?

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殺し屋のマイケルは,恋人エレナの妊娠を機に組織を抜けることを決心した.病床にあるボスはマイケルに理解を示したものの,組織の人間たちは彼を許そうとしない.ボスの息子ステヴァンはエレナに,そして孤児院「アイアン・ハウス」で共に育ち,生き別れになっていた弟のジュリアンに刺客を送る.
殺し屋になった兄と,画家になった弟の人生が再び交わるとき.壮絶なクライムミステリ.時間が経って変化する人間もおり,変わらないものごともある.交差する過去と現在の出来事が,恐ろしく執拗に,それでいてスマートに描かれてゆく.完全に引き込まれてしまった.読みやすさもあって,暴力のにおいが漂う物語から目が離せなくなる.素晴らしいエンターテイメントだと思う.気になったのは,たたみかけるようなテンポですっきり収まっていくクライマックス.きれいすぎて逆にすっきりしないというか.作品の価値を損ねるものではないんだけど,そこだけ気になった.いずれにしても,読んで損のない作品だと思います.