小木君人 『森の魔獣に花束を』 (ガガガ文庫)

森の魔獣に花束を (ガガガ文庫)

森の魔獣に花束を (ガガガ文庫)

「しかしですね、だからって“明日はわからねェんだから今日だけ、今だけ楽しければいい”っちゅうのも違うと思うんでさァ。たとえば、料理だって手間暇かけたほうが美味くなるでしょう? たった一日で得られる幸せなんざァ、一週間、一か月、一年、十年、なにかを積み重ねて初めて得られる幸せに比べれば、高が知れてまさァ」

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グラント家の長男クレヲは,生まれつき病弱なため父親から見放され,絵を描くだけが楽しみの孤独な暮らしを送っていた.父と継母によって跡継ぎ継承の試練の旅に出されたクレヲは,魔の森に住む魔獣の少女に捉えられる.
孤独な少年と無邪気な人喰いの魔獣少女(裸レインコート)の出会いと,ふたりで過ごす日々.体裁はボーイ・ミーツ・ガール,というか不器用な少年少女の話なんだけど,単にそう呼ぶにはだいぶ座りが悪い.誰からもほめられたことのないクレヲと,誰からも名前を呼ばれたことのない魔獣の少女の,これは共依存の話と言っていいのかな.喰われるかもしれないという恐怖と,それでも認めてもらいたい・離れがたいという子どもっぽい恋愛未満の感情が,クレヲから未整理のまま吐かれる感じ.重めのトーンで統一される物語はじわりじわりと気持ち悪い.個人的にちと受け入れがたいラストもその印象に拍車をかけていた.気持ち悪いから NG ということではまったくなく,これは生理的に合わなかったというべきか.