ササクラ 『緋色のスプーク』 (講談社BOX)

緋色のスプーク (講談社BOX)

緋色のスプーク (講談社BOX)

これが死神が飛ぶ空間だ、とアガヅマは奥歯を噛み締める。神など存在しない、と公言して已まないニケが唯一、そして多くのパイロットたちが信じる死神。
ここには、それがいる。

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戦争が繰り返される時代.小国ヒノメで戦闘機の整備工をしているアガヅマは,幼なじみの裏切りにあい,敵国へ拉致されかける.そこを救ったのは,「死神」と呼ばれる女性パイロット,ニケだった.
死神と呼ばれる女戦闘機乗りとその専属整備工の戦争.第 5 回 BOX-AiR 新人賞受賞作.イラストは第 1 回 BOX-AiR アニメイラストコンテスト受賞者ということで,こちらも気合いが入っている.外箱の惹句から空戦もの,戦争ものかと思いきや,目を引かれるのはふたりとその幼なじみの物語.非常にドロドロしており,あらすじからはまったく想像できなかった.登場人物はそれぞれに何らかの信念を抱えていて,誰もがその信念の目指す方向を全速力で突き進んでいるのだけど,その方向が傍目にすべて間違っている.というのかな.文章に癖があって,最初は読みにくくて仕方なかったんだけど,ニケの飛ぶ理由・「死神」と呼ばれるようになった理由が明らかになってからの緊張感がものすごい.破滅の予感しかしない,だんだんと締め付けるような展開に目が離せなくなってしまった.ということで良いものでした.