野尻抱介 『ふわふわの泉』 (ハヤカワ文庫JA)

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

ふわふわの泉 (ハヤカワ文庫JA)

「わかんない。でもとにかくできちゃったんだし」
「ま、いいか。できたんだから」
「そうそう」
そして二人は、努力しないで生きる、次なるステップを踏み出したのだった。

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化学部部長の女子高生・浅倉泉は,文化祭の準備でフラーレン合成をしている最中,偶然から新しい物質を合成してしまう.ダイヤモンドより硬く空気より軽いその粒子を「ふわふわ」と名付けた泉と化学部員の昶は一儲けを企てる.
2001 年 4 月にファミ通文庫から出た作品の,11 年ぶりの復刊.旧版は(この日記をはじめるより前に)読んでいるので,約十年ぶりの再読になるのだけど,さすがに新しく気づくことがいろいろ多い.努力しないで生きるって魅力的だけど,面倒なこと多いよなー,とか,細々した部分に,ブラックな皮肉がえらく効いているのな.地球人の相手をしてくれるのが「発狂した」宇宙人だけっての(と,一連のやり取り)が象徴的.解釈が 100 パーセント合っているか自信ないけど,いつかのスパロボのキャッチコピー「人類に逃げ場なし!」を思い出す.といった感じで,感想を言葉にしようと思うとネガティブな表現になってしまうところも多いのだけど,非常に良いジュブナイル SF である,と改めて思ったのでした.