川岸殴魚 『人生 第5章』 (ガガガ文庫)

「名前と仕事は関係なくないですか?」
「いや、おかしな名前をつけるような家庭環境では、教育も行き届いておらん可能性が高い。我が社には必要のない人材だ」
「お義父さんの、じょふふぅっけっ&つぁあぐぅっばぅぇ物産は名門ですものね」
「違う。じょふぶぅっけっ&つぁぁあぐぅっばぅぇ物産だ」
「すみません。じょぅふふぅっけっ&つぁぁあぐぅっばぅぇ物産でしたか」
「じょふふぅっけっ&つぁあぐぅっばぅぇぉうぉうああ物産という説もある」
「……じょふふぅっけっ&つぁあぐぅっばぅぇぉうぉうああ物産」
「そう、合併前は……じょふふぅっけっ&ずぁあぐぅっばぅぇぉィィィィ物産だったが」
「……なんでもいいです」

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部費がゼロになってしまった第二新聞部は,彩香の口車に乗せられて九文学園美少女コンテストに出場することになる.優勝賞金50万円,準優勝10万円のこの大会,実は生徒会の仕掛けた出来レースで,すでに優勝者は生徒会長の香織に決まっていると言う彩香.生徒会の不正を暴くため,エントリーした第二新聞部であったが.
人生相談ライトノベル第五巻.毎度のことながら,しっかり笑えるコメディで安定してるなあ.ボケとツッコミは会話中心のライトノベルの基本だと思うけど,言葉のちょっとしたずらし方がうまい,のかな.「もし私が底なし沼にはまっていたらお前は躊躇なく飛び込める男だ」「なんで沼にはまってるのかな? 沼になんの用が……」みたいなハズし方があちこちにあり,スマートにハマっているのがすごい.どのキャラクターもいちいちかわいいし,あと,過去の人生相談がちゃんと意味を持って生かされているのがすごく良かったと思う.正直,使い捨てのネタだと思っていたので,ちゃんと伏線になっていたのか! という驚きと感動があった(すみません).刹那的なネタにストーリーの流れもちゃんとあって,これほど安心感を持って楽しめる作家もいないですよね.