岡本タクヤ 『僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!』 (ファミ通文庫)

「じゃあ私も高橋君に一ついいこと教えてあげる。ニヒルでクールで繊細を気取るには天性の才能が必要なの。才能がない人が真似をしようとしても、嫌味で陰気で被害者意識の過剰なボンクラにしかならないの。わかった?」
「はい、理解しました。百パー把握しました。うわあ、僕って理解が早いなあ」
「そういうのもむかつくのよね。調子乗らないで」
「あ、はい、すいません」

Amazon CAPTCHA

スポーツ,芸術,料理など,あらゆる方面に天才的な才能を持ちながら,その最悪な性格が災いして帰宅部でぼっちの高橋.高校二年生になった高橋の前に,性格以外完璧な美少女である佐藤が現れる.生徒会長になるために高橋の才能を利用しようと考えた佐藤は,部活の悩みを解決する部活,「高橋部」を作る.
溢れる才能,クズとクズのかみ合わない会話.あとがきによると5年半ぶりのオリジナル単行本,ということはデビュー作以来なのかな.コメディ要素にハズレはなく,筆力は信用しているのだけど,率直に言ってちょっと長い.もともと短篇として発表したものを長編化したとのことだけど,普通はこの内容で300ページを越えないのではないか.「無能な善人」による統治の話がわりとさらっと説明されてしまったのはちょっともったいなかったのではないかなあ.長いこと以外にこれといって欠点はないと思うのだけど,ちょっとだれてしまったのは正直なところ.