小山恭平 『我が姫にささぐダーティープレイ』 (講談社ラノベ文庫)

「努力ってのは本質的に恥ずべきことなんだよ。だって努力ってほら、やりたくもないことをやってる時にしか使わない言葉でしょ? 超おもしろいマンガを読むのは娯楽、だけど読みたくもないマンガをなんとか読了しようとするのは努力。

やらされている、やらざるを得ないこと――それが努力。ほうら、弱いでしょ? やりたくもないことをやらされてるんだもん。環境が弱いねーその立場恥ずいねー。

今自分は努力していると感じるのなら、そんな立場を恥じるべきだし、そんな環境を嘆くべきだし、なにより――努力している自分を誇らずにはいられない、心の弱さを憎むべきだよ」

「王」たる存在を支えることを何よりの喜びとしていた高校生,鎧塚貝斗は,ある事件をきっかけに異世界に転生する.そこで彼は,公爵家の執事として一人娘であるラライ・アッフィールドに仕えることになる.類まれなる美貌を持ちながらも努力を嫌い,腐りきった性格のラライ.しかし彼女に何かを見出したカイトは,その野望のために尽力することを決意する.

努力を恥ずべきことと断言するクズなお嬢様を王にするためには何をすればいいのか.それはライバルの動向を調べ,弱みを握り,籠絡すること.知恵比べのようでもあり,一種のピカレスクロマンとも言えるかもしれない.まあ,明らかにご都合主義で動いているところがあるので,期待しすぎると肩透かしを喰らうかもしれない.出てくるキャラクターは基本的に性格が悪く,Mっ気が強い.なんというか話もキャラクターもやたらと癖が強い.そこに魅力を感じられるか否か.実に講談社BOX出身作家らしいな,と思ったことでした.