紫藤ケイ 『クラッキング・ウィザード 鋭奪ノ魔人と魔剣の少女』 (このライトノベルがすごい!文庫)

「思い込むな。自分で自分を見限るな。殺した心を――夢見た未来を解き放て
『……!』
「それが辛い時は、相談に来ればいい。相手になるよ。友達としてね――」

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天空に浮かぶ魔法都市《ヴァラスキャルヴ》の一角で,魔術探偵(グラムハッカー)を営む少年,ヴァルのもとに,倒産した魔術器具(グラムドライバー)開発企業の元令嬢,エーレフォーアが訪れた.彼女の依頼は,盗まれた母の形見の腕輪を取り戻すこと.周囲と距離を置きたがるハッカーの少年とお転婆なお嬢様はそれぞれの持てる技を使って腕輪の行方を探す.
浮遊する魔術都市を舞台にしたファンタジー.外法術師(ハッカー)《擬似世界樹(ユグドラシミュラ)翠玉板(エメラルド・タブレット)などの用語で分かるかと思うけど,魔法を情報技術みたいな用語とテクニックで扱う世界観.なんか今までの作品に比べるといまひとつ練り込みが甘いような気がするのよな.ハッキングやプログラミングに関連する情報技術用語を,魔法に関連する用語を作って置き換えたはいいが,そこで止まっているように見える.「線引き」をしたがる主人公ヴァルの,その後の選択もなんか腑に落ちない.キャラクターはいずれもいきいきしてていいんだけど,ストーリーはもう一歩という印象でした.