だから、神よ。次の機会を我に与えよ。次は大局を見失わない、道程のあらゆる障害、敵、艱難辛苦を排除してみせる。次こそはこの世全ての善を手に入れてみせる。万人が幸福であり、万人が善性であり、万人が完璧である世界。あらゆる悪が駆逐された、真なる世界を創造してみせるとも。
Fate/Apocrypha[フェイト/アポクリファ] - TYPE-MOON BOOKS
――脳が痺れるように幸福な、祈りの夢を見た。
消滅した“黒”のセイバーの心臓を貰い受けたホムンクルス,ジークは自分の望みを叶えようとしていた.15人目のサーヴァントであるルーラー,ジャンヌ・ダルクはジークを追う.そして戦場では,“赤”のアサシンの宝具
ルーマニアの森を中心とした戦場の描写が半分以上を占める「聖杯大戦」第2巻.恐ろしい情報の密度で,叩きつけるように描かれる戦場はまさにノリノリ.熱い.楽しんで書いているのがよく分かる.ただ,真名や宝具の説明をみっちりと入れた戦闘は正直テンポは悪く,同時進行するサーヴァント同士の戦いも,切り替えがあまりうまくいっていない.群像劇と思って俯瞰すると微妙になってしまうなあ.英霊たち(とそれ以外)それぞれの求める「英雄」,あるいは「正義の味方」像が浮き彫りになり,目指すところがわかりやすくなっている.14人ずつ(?)いるマスターとサーヴァント,それぞれに妙に犬っぽいキャラがいるので,そういうのが好きなひとは読んでみるといい.
あとちょっとおっと思ったのが「神」の存在.ロン・カリー・ジュニアの『神は死んだ』(感想)に割りと近いものがあるんだけど,一部を崇高にして,一部を卑近にした感じ.両方読まないとわからないと思うので,興味があるなら両方読んでみるといいさ.