陸凡鳥 『隣人は真夜中にピアノを弾く』 (ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く (ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く (ガガガ文庫)

さらにファンタジー繋がりで述べるのなら、ハードボイルドは男の幻想(ファンタジー)だ、との名文句がある。これを逆説的に(あるいは意味どおりに)捉えるならば、そんなものは存在しないと言われているに等しい。男の友情やら義侠心やら気の利いたやりとりやらは、すべて絵空事であると。しかし小生は、だからこそハードボイルドを書きたいと考えた。リアリズムは、辛い現実だけでたくさんだ。このジャンルがファンタジーだと言うのなら、むしろライトノベルに適した素材なのではないか。萌え系美少女や凄い必殺技が出てくなくとも、ファンタジー小説は作れると思う。

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「この男は悪魔だ!」.ペンキで殴り書きにされたメッセージを残し男が殺された事件を調査するため,町を訪れた新聞記者のバド・ポッド(バド・パウエルがモデルらしい).同僚のリッチ・フレンドリーと町を取り仕切るマフィアの経営するレストランを尋ねたバドは,そこでピアニストのシェリ・レゾンと出会う.
ノベライズだった「武装神姫」に引き続いての,オリジナルサスペンス・ハードボイルド作品.この世界には人間社会の裏側に,「隣人」こと悪魔の社会があり,それぞれの秩序を持っている,という.主人公が四十手前,ヒロインが25歳と,相変わらずコーナーを攻めるなあ.「悪魔」というわりにはいわゆるファンタジーらしさはほとんどない.むしろ悪魔社会も上下関係がきつそうだし中間管理職は大変そうだし,悪魔は悪魔で大変だ……みたいな変な感慨がわく.事件の結末はもたつき気味で,せっかく積み上げてきたスタイリッシュさも,読み終わってみると中途半端にごまかされてしまった感が強い.狙いはすごく面白かったんだけどなあ.