深見真 『キャノン・フィストはひとりぼっち 1』 (ぽにきゃんBOOKS)

――その記憶を盗らないでください。
それもぼくの大事な思い出なので。

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2000年代から各地に現れ,2010年代後半に爆発的に増殖した奇怪な生物.「記憶喰らい」(Memory Eater),[M・E]と呼ばれるそれらの知的生物は,人間の記憶,感情,思い出を吸収する.通常の攻撃が効かない[M・E]を,人知れず密かに退治する者たちがいた.
角の生えた少女と出会い,ひとりぼっちの少年は戦う力「キャノン・フィスト」を手に入れる.新規レーベルでの新シリーズ.ざっくりと言うと,『疾走する思春期のパラベラム』から『僕の学校の暗殺部』につながるファミ通文庫のシリーズに雰囲気が近いかな.正義感を持ちながら,過去に経験した悲劇が原因で,どことなく他者と距離を置いてしまう主人公の鬱屈を,非常に良いバランスで描いていると思う.「感情記憶合金」や「金属脳モデル」というややアナクロなSFガジェットが楽しい.戦闘シーンになんか違和感があるなーと思っていたら,あとがきで「今までの自分とはちょっと違う戦闘シーンを目指し」たとあって納得した次第.ただし参考にしたという「ある映画」はよく分からなかった.断言できないけど,作中でタイトルのあげられたヒーローものかな.