陸凡鳥 『隣人は真夜中にピアノを弾く 2』 (ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く2 (ガガガ文庫)

隣人は真夜中にピアノを弾く2 (ガガガ文庫)

「……引き受けたからには、約束は果たす。……だが、これだけは言わせてくれ。タイロンは悪魔と契約した。ハッピーエンドにはならんと思うぜ」
そうした事例なら、デュヴィヴィエは私の何百倍も見てきていた。
「おそらくはな。……しかし、だからといって、放っておけはしない。彼はこの一年、私を匿ってくれた。悪魔は収支を合わせるものだ。……私は彼を生かしたい。それが私なりの、借りの返し方だ」

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19年前に逃走した悪魔,ヴィクトル・デュヴィヴィエを捕縛するよう命令を受けたバド・ポッドとリッチ・フレンドリー.ふたりは,デュヴィヴィエが潜伏しているという北の町へ赴く.町から離れた小屋でひとり暮らしていたデュヴィヴィエは,ある理由によって悪魔としての能力をすべて失っていた.
悪魔のバディもの第二弾.登場人物が約一名(表紙イラストを参照)を除いてすべて男性という男性向けライトノベルは珍しい.イラストレーターが「そろそろ少女を描かせてください」と嘆くのもわかる.一巻(感想)とくらべると,必要以上にカッコつけたところが減り,ミステリ風の仕掛けの落ち着いたバディものとして,かなり完成度が高くなっている.口が達者な悪魔のデュヴィヴィエと,無骨で不器用なおっさんのタイロンの,対称的なふたりの奇妙なつながりをきゅんきゅんして読むといい.デュヴィヴィエのモデルはたぶん『相棒』の右京さんよね.結果的にフックがやや弱くなっている(気がする)ので,もっとキャラクター寄りの小説にしても良かったのではないかと言う気もしたけど,なんだかんだ楽しく読みました.