二語十 『探偵はもう、死んでいる。6』 (MF文庫J)

「だがまあ人間そんなもんだろ? ああ、そうさ、それでいい。おれが今日、昨日、過去、お前に偉そうに講釈垂れたことなんて、全部無視して構わない。明日お前が好きになったラッパーのリリックに人生を左右されようが、それもまた人生だ」

「信念がマシュマロぐらい柔いな」

「はは、鉄みたいに硬い信念だと折れた時に大変だぞ」

名探偵シエスタと助手君塚君彦が初めて出会ったのは、地上一万メートルのハイジャックされた機上、ではなかった。今から語られるのはさらに四年前の話。小学生だった俺が《師匠》と出会う場面から始まる。

君塚の師匠との出会い、そしてこの世界を支配するなにか。名探偵と助手、ふたりの本当の出会いを描いた、いわばエピソードゼロ。師匠ことダニー・ブライアントと君塚の、親子ともバディとも違う関係を、ハードボイルドを強く意識したであろうカッコつけた文章で語る。まさにカッコいい。それにしても、一巻ごとに好き勝手やってるなあとは思っていたけど、あとがきを読んだ限りそう間違ってはいなかったようだ。ただ風呂敷を広げるというのとも違ってて、本当に好き勝手書いている感があり、追いかける甲斐がある。一巻の時点で果たしてどこまで考えていたのか。引き続き楽しみにしております。


「知ってる? 世界を救うような物語の主人公は、いつだって少年少女だと相場は決まってるんだよ」