法条遥 『忘却のレーテ』 (新潮社)

忘却のレーテ

忘却のレーテ

「ああ……」
博士が、うっとりとした顔で、呟いた。
「おめでとう、笹木唯さん。これで実験は完全に終了しました」

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オリンポス社の開発した,記憶を完全に消去してしまう薬,「レーテ」.レーテの臨床実験に参加することになった笹木唯は,外との行き来ができない施設で,「昨日」が毎日消える一週間を過ごすことになる.
一日の終わりに薬が投与され,前日の記憶がすべて消去される.そこで,記憶が無い.記憶消去薬「レーテ」の実験施設で起こる七日間の出来事.記憶を消され,何度も同じことを繰り返す(だけどどこかが異なる)数日間.なぜかいっしょに実験に参加している美貌の殺し屋.そして記憶消去薬が開発される理由について.このひとの作品はもれなくひどいのだけど,そういう意味で,本当に信頼できる作家だと思う(個人の感想です).後半に向かってだんだんとゴチャゴチャになっていくのもいつもの欠点だよな……と思っていたら,それも仕掛けのひとつだったりする.勘のいい読者ならわかる仕掛けではあるのかな.頭からパラパラと再読してみて,なるほどと激しく感心した次第.ちょう楽しかったです.