森田季節 『不戦無敵の影殺師(ヴァージン・ナイフ)5』 (ガガガ文庫)

「どこまで事情をご存知かわからないですが、昨日、俺の煌霊が――」
あとはこれまでと同じだ。やっぱり、しゃべるたびにうまくなる。あんな動的で悲劇的な一日ですら、特別な事件という扱いでパック詰めされてしまう。もしかすると、つらいことというのはあまり語ってはいけないのかもしれない。言葉にすると、それは世界中に転がっている嫌な話の一つになる。
それでも俺はこれまでで一番必死だったのだと思う。

不戦無敵の影殺師(ヴァージン・ナイフ) 5 (ガガガ文庫) | 森田 季節, にぃと |本 | 通販 | Amazon

煌霊でも人間でもない存在となり,意識を失った小手毬.朱雀は彼女を救うことができるのか.
死んでもいないが生きてもいない,時間の止まった状態に置かれたパートナーという存在が行動と思考を縛り付ける.諦めることも進むこともできない状況.すさまじく愛が重かったシリーズ五巻.各シーンにおいて,言葉の裏にある意図を一歩だけ掘り下げて(あるいは客観視して)語るのが良かった.27歳の主人公の今後の生活だったりこれまでの人生だったり,関わってきたひとたちだったりという,ストーリーの説得力を強くしていたと思う.クライマックスの文字通り「命をかけた戦い」の重みも増すというもの.素晴らしく良かったです.