ツカサ 『ノノノ・ワールドエンド』 (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

ノノノ・ワールドエンド (ハヤカワ文庫JA)

言葉を交わして、気持ちを理解するだけじゃ、きっと足りない。
私たちは生きているから、体があるから――肌で触れないと本当のことは分からないのだ。
「嫌じゃない……?」
加連の耳元で囁くと、彼女は無言で私の背中に回した手に力を込めた。
分かり切った質問をするなということだろう。
私は満足して小さく笑い、触れ合う場所から伝わる心音に意識を傾ける。

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世界なんて終わってしまえばいい.中学三年生の穂村ノノの願いが叶えられたかのように,世界は白い霧に覆われ,終末のときが近づきつつあった.義父の暴力から逃げ出したノノは,世界が終わるのは自分のせいだという白衣の少女,加連と出会う.
白い霧に覆われ,静かに終わる世界で,ふたりの少女は終末に向かう旅に出る.『少女終末旅行』と『ハーモニー』を足し合わせたようなガール・ミーツ・ガール終末小説.SF的な要素は雰囲気づくりにとどまり,ふたりの事情と,ふたりの静かな時間(百合)を描くことに多くの労力を割いている印象.描写の激しさではなく,静かだけど多く費やされるページ数で,そのままふたりの過ごす時間を表している,のだと思う.ふたりでいっしょにお風呂に入るシーンも,エロいのだけどいやらしくなく,そこがすごく良い.
作中でもそれらしいセリフが出るのだけど,あくまでふたりの見える範囲を描いた小説であって,世界の滅亡を描いた小説ではないのだよな.セカイ系百合小説の完成形のひとつではないかと思いました.