宮澤伊織 『何かが深海(うみ)からやってくる 8月の迷惑な侵略者たち』 (一迅社文庫)

何かが深海からやってくる 8月の迷惑な侵略者たち (一迅社文庫)

何かが深海からやってくる 8月の迷惑な侵略者たち (一迅社文庫)

「この島にはサメが多くてね」
「はあ」
「数だけでなく、種類も多い」
「そうなんですか」
「そうなんだ」
神主は真面目な顔で頷く。
「中には陸に上がってくるものも……」
「ちょっと待ってよ!」

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夏休みを利用して,磯名出島を訪れた竜一と幼なじみの澪.この島は周辺にサメが多いことで知られており,若くしてサメ学者として知られる澪の研究に竜一がくっついてきた形だ.この島では,二本足で立つサメが陸に上がって人々を襲うことがあるという.
南の島のサメパニックホラー小説.イラストといい色んな意味でサメじゃねえな! クトゥルフだったりオカルトだったりナチだったりゾンビだったり,Z級を愉快に突っ走っている.そうだよこういうのでいいんだよ,みたいな読み心地で楽しい.Z級路線を行き過ぎて,主人公と幼なじみの美少女研究者という,いかにもライトノベルっぽい要素が浮いている気もするけど.あとがきで「ライトノベルで好ましくない描写を避けました」みたいなことを書いているけれど,手加減なしで書いたらどうなるのかすごく興味が出てきた.実際に書けることは疑いようがないし,というかライトノベルでドロドロした話を書いても特に問題ないのではないかな.