酉島伝法 『宿借りの星』 (創元日本SF叢書)

宿借りの星 (創元日本SF叢書)

宿借りの星 (創元日本SF叢書)

「よいか、マガンダラ。奪還戦争は再びはじまったのだ。しかも敵は以前よりも遙かに狡猾な手を使っておる。御惑惺様に誓って、我々は卑徒(ひと)の侵略を食い止めなくてはならん。卑徒の巣を滅ぼさねばならん。判るな」

その星では,かつて人間たちを滅ぼした生物たちが社会をつくり暮らしていた.罪を犯したため,尾を切断されたうえで国を追放されたズァングク蘇倶(ぞく)のマガンダラは,命からがらの放浪の末にたどり着いた土地で,滅んだはずの人間が思わぬ形で生き残っていることを知らされる.殺戮生物と卑徒(ひと)の奪還戦争は再びはじまろうとしていた.

咒漠に落とされたマガンダラは,宜兄弟のちぎりを交わしたマナーゾと旅に出る.「皆勤の徒」の著者の初長編.導入こそものものしいものの,次々と現れる不気味で魅力的な生物たち,それらが織りなす社会や生態,そして倶土(くに)宇視(うみ)などありとあらゆる造語で語られるストーリーに惹き込まれる.時折妙に人間臭いユーモアが挟まるのは意図したものなのかな.ストーリーラインは意外とシンプルで,雰囲気としては「けものフレンズ股旅編」とでも言えると思う.作者自身の手によるイラストと造語に頭が馴染んだあたりから,徐々に強くなる卑徒(ひと)の陰と世界の謎.一気に読ませられた.楽しゅうございました.



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