三島浩司 『ウルトラマンデュアル2』 (ハヤカワ文庫JA)

ウルトラマンデュアル2 (ハヤカワ文庫JA)

ウルトラマンデュアル2 (ハヤカワ文庫JA)

「自分のために行為しない唯一の宇宙人をボクは知っている。それは光の国の戦士だ。ヤツらは正義のために勝手に体が動いてしまう。たぐいまれな実力がなければとっくに絶滅しているはずだけどね。さて、地球に光の国の真似ができるかな」

ヴェンデリスタ星人との戦いから8年あまりが経った.国際防衛大学の設立と地球防衛軍の結成により,地球は敵性宇宙人との戦いに備えていた.栗村円と一ノ瀬環は新世代のウルトラ戦士になることを望んだが,ウルトラ・オペレーションに失敗した円は日本中からの嘲笑を受け,失踪してしまう.

相撲をモチーフに,宇宙外交と正義と愛をテーマにしたオリジナルのウルトラマン小説,第二巻.国民に選抜されて,「超人」は人為的に生み出されるようになり,ウルトラ化した人類が乗ることを想定した宇宙警備隊の戦闘機が開発される.一方でそんな人類のウルトラ化を抑止する思想「イチノセ・ブレーキ」が発表される.

果たして地球人は宇宙を守る者にふさわしいのか.良い意味でも悪い意味でも淡々としているので,盛り上がりに欠けることと,あれもこれもと詰め込んでいるためか,500ページ超に渡る厚さがありながらも収束している感じがしないのは欠点かなあ.小説としての面白さより,提示される思想やアイデアの密度を面白がる印象で,好みは分かれるかもしれない.怪獣小説でもヒーロー小説でもない,現代だからこそのウルトラマン小説だと思うのでした.



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